やさしい解説 / 2026-07-07

広告づくりの「工場のルールブック」を固定した日

小澤さんは、広告制作を半分自動にする仕組み「Aibou Loop(あいぼう・ループ)」を作っています。今日、その工場のルールブックを5か所直しました。専門用語も出てきますが、全部たとえ話つきで説明します。

今日ひとことで言うと

「なぜ作るか」を必ず紙に残し、AIの下書きは先生(小澤さん)の採点を通るまで正式扱いしない、というルールを工場に固定した。

新しい機能を足したのではなく、みんなが守る約束ごと(契約)を文章とプログラムの両方でカチッと決めたのが今日の中身です。正本は docs/production_brief_contract.md

まず登場人物(工場で働くAIたち)

Aibou Loop は、AIがそれぞれの持ち場を担当する「自動化された工場」です。人間の部署とそっくりの分業になっています。

呼び名役割(工場でたとえると)
handan(判断係)毎朝出勤して数字を見て「今日は何を作るべきか」を決める工場長。常駐せず、判断だけして帰る。
daihon(台本係)広告のセリフ(台本)を書く制作担当。/script という道具を使う。
bucho(検品係)出来上がった台本が要件を満たしているか検品する品質チェック担当。
小澤さん工場のオーナー。最終的に「これは本物の知識だ」と認める採点者。

変更前 → 変更後

今日の工事で、工場のルールがどう変わったかをまず全体で見ます。

これまで(もやっとしていた所)
  • 「なぜこの広告を作ったか」の理由がどこにも残らず消えていた
  • AIが出した下書きが、そのまま正式な知識みたいに扱われる恐れがあった
  • 指示どおり作ったのか、AIが勝手に変えたのか後で分からなかった
  • 誰がどこまでやっていいか(権限)が曖昧だった
  • 設計書に古い「8本」と新しい「6本」が混在していた
今日から(カチッと固定)
  • 作る前に「依頼書」で理由を必ず残す
  • AIの下書きは、小澤さんの採点を通るまで正式知識に昇格させない
  • 指示をどこまで守ったかを4段階で記録する
  • 各AIの権限をプログラムで固定(テスト118件パス)
  • 冒頭は「6本」に統一(過去の記録は履歴として保存)

5つの変更を、たとえ話つきで

それぞれ「何をしたか」と「学校や部活でいうと何か」をセットで説明します。

01

「制作依頼書」を導入した

production_brief

広告を作るとき、これまでは「やることリスト」(.ops task)しかありませんでした。作業は進むけれど「なぜ作ったのか」が終わると消えてしまいます。そこで production_brief(制作依頼書)という紙を新しく作りました。ここには「なぜ作るか・何を試すか・何が勝てば学びになるか」を書きます。

役割分担はハッキリさせました。依頼書=意図(なぜ)の記録やることリスト=進み具合の記録。同じ情報を2か所に書いてズレないようにします。依頼書を書けるのは小澤さんと判断係(handan)だけ。台本係などの現場AIは書けません。

たとえるなら
学校の「自由研究の計画書」。何をやるかのTODOメモ(やることリスト)とは別に、「なぜこのテーマを選んだか」を書く計画書があるイメージ。計画書がない研究には手をつけない、というルールです。
02

AIの下書きは、すぐには保存しない

flow_draft

台本を書くAI(/script)は毎回、「読者の気持ちがどう動くか(不安→納得→行動)」という設計図を下書きで出します。これを flow_draft と呼びます。でもこれはあくまでAIの仮説(予想)であって、正しいと決まったわけではありません。

だから、AIの下書きをそのまま正式な知識ベース(Koza OS=小澤さんの頭の中を写した知識置き場)には入れません。小澤さんがレビューしてOKを出したものだけが、正式な知識に「昇格」します。

たとえるなら
テストの答案。自分で書いた答え(下書き)は、先生が採点して丸をつけて初めて「成績」になります。採点前の答案を成績表に書き込んだら、当てずっぽうと本物の実力が混ざってしまいます。それを防ぐルールです。
03

「指示どおり作ったか」を記録する

route_compliance

実験の設計図(route brief)を渡して台本を作らせるとき、台本AIがその指示をどこまで守ったかを4段階で残すようにしました。これが route_compliance です。

4段階意味
none指示どおり。逸脱なし
minor_deviation小さな逸脱。狙いは保てている
major_deviation大きな逸脱。実験の解釈に影響する
blocked_by_guardrailルール(規制など)に阻まれて作れなかった

これがあると、実験がうまくいった(or 失敗した)とき、それが「指示が良かったからか」「AIが勝手に変えたせいか」を後から区別できます。

たとえるなら
料理部でレシピどおり作る実験。「レシピ通り」「少しアレンジ」「大幅アレンジ」「材料が無くて代用」の4段階をメモしておけば、味の良し悪しがレシピのおかげかアレンジのせいか分かる、というのと同じです。
04

各AIの権限を、プログラムで固定した

テスト118件パス

「どのAIが何をしていいか」を、文章だけでなくプログラムのレベルでも縛りました。具体的には —

・台本係(daihon)は、データベース(BQ)には下書きの登録しかできない(本確定や書き換えは禁止)。
・検品係(bucho)から、使っていない余分な権限を削除。
・判断係(handan)を「工場に住み込みで常駐する人」ではなく、「毎朝出勤して判断だけして帰る人」として正式に定義。

この変更で壊れていないことを確かめるため、自動テスト118件がすべて合格しています。

たとえるなら
部活の役割で「会計係はお金の記録だけOK、勝手に使うのはNG」と決めるようなもの。しかも口約束ではなく、金庫の鍵を役割ごとに物理的に分けた(プログラムで固定した)状態です。
05

冒頭は「6本」に統一した

6本が正

広告の「冒頭(つかみ)」を何パターン作るか。決裁では6本が正しいと決まっているのに、古い設計書やスキルの一部に「8本」という表記が残っていました。これをすべて6本に直しました

ただし、過去に8本で行った実験の記録はそのまま履歴として残します(歴史を書き換えない)。

たとえるなら
校則が「制服のボタンは6個」に決まったのに、古い印刷物に「8個」と書いてあったのを直したイメージ。昔8個だった時代の写真(過去の実験記録)は、消さずにアルバムに残しておきます。

全体の流れを図で見る

依頼書ができてから、正式な知識になるまでの一本道です。「小澤レビュー」を通った物だけが右端の正式ナレッジに進めるのがポイント。

判断係(handan) 毎朝出勤・数字を見て決める 制作依頼書 production_brief なぜ・何を試す・何が学び やることリスト .ops/tasks.jsonl 進み具合の記録 task_id で連携 台本係(daihon) 台本+下書きを作る flow_draft(=AIの仮説) 検品係(bucho) 体裁・要件を検品(昇格はしない) 小澤レビュー =採点ゲート OKのみ通過 正式ナレッジ knowledge/koza_os/ 検証済みの知識だけ

実線=ものの流れ/点線=依頼書とやることリストの相互参照(task_id)。検品係は「揃っているか」までを見て、正式知識への昇格は判断しない。昇格の採点は小澤レビューだけが行う。

今日はまだやらないこと(Stage 2以降)

今日はルールブックを固定しただけ。実際に自動化する部分は、数日ルールを運用して確かめてから進めます。

1
データベース(BQ)に専用テーブルを足すのは、まだやらない
依頼書は当面ローカルのJSONファイル(knowledge/koza_os/production_briefs/)で運用。テーブル化は Stage 2 で検討する。
2
AIの下書き(flow_draft)を自動で昇格させる仕組みは、まだ作らない
今は小澤さんが手でレビューする。半自動化は Stage 2 以降。
3
まずはルールブックを数日ちゃんと運用してみる
約束ごとが現場で回るか確かめてから、次の自動化に進む。急いで作り込まない。
正本(この解説の元になった契約書): docs/production_brief_contract.md v1.0(2026-07-07)/親文書: docs/aibou_loop_design.md。 用語の正確な定義・フィールド仕様はそちらが優先されます。この解説はやさしく噛みくだいた副読本です。